「田上俊介」10年経っても変わらぬ【キーリ】愛

半年以上前に、第9回電撃ゲーム小説大賞受賞作【キーリ】が完結10周年を迎えた際に

商業としてどこに出るわけでもない、言葉を選ばなければ”趣味絵”として

イラストを務めた田上俊介がtwitterにてこちらのイラストを公開した。

原作者の壁井ユカコにも快諾をもらった、とも記しており

二人の変わらぬやり取りを覗けたことも

ファンとしてはこれ以上ない節目の年を迎えることが出来たというもの。

やはり、自分が愛読していた作品を作者もこうして愛情もって触れてくれることは至上で

今後もことあるごとに「おもしろい小説があってさ……」と振り返ったり勧めたりできる

一生の宝物だと言いきりたい。

その後も登場キャラのバストアップのラフが上がり、

仕事の合間を縫って着彩し順々に公開していく田上。

そしてついに六月に主役カップルのイラストが完成し、

久々に瞳に光のあるハーヴェイを拝めたことが嬉しくて仕方がない。

ベアトリクス変わらなすぎィ!相変わらず美しい。

逆にヨアヒムは変わりすぎィ!エセじゃなく紳士にみえる不思議。

キーリはこんな顔しない!……いや、ハーヴェイにだけはするのか?

あ、そっか最終巻あたりにはもう激情豊かになってたか!

とイラストを見るたびに一喜一ゅ……一喜一優していたのは自分だけではないはずだ。

キーリ

多感期をどっかに忘れてきた霊感少女が淡々と青春を塗りつぶしていたある日に

捨てきれないくらい甘っちょろいくせに世捨て人を気取る戦闘兵器に出会い

幸と不幸をお互いから奪い合うような不毛な出会いと別れを繰り返して

その摩擦熱にやられて人間らしさを取り戻していく微妙に幻想になりきれない冒険ファンタジー。

ストーリーとしてダイナミックな仕掛けや劇的などんでん返しがあるわけじゃないのに

読後感がずしんと胸にとどまり続けるような不思議な作品で

文章から蒸気やら石油やら埃やらのニオイが漂ってくる文章力の高さ、描写の緻密さと

どこか斜に構えた言葉選びがほかのライトノベルと一線を臥していた。

キャラの台詞よりもむしろ(主人公の心情表現とはいえ)地の文章のほうが特徴的で

原作者も自虐しているが句読点を挟まずつらつら連なる文体がクセになる。

(かくいう筆者Bはそこに憧れて真似ている節がある)

かわいい顔して冒頭からかましてくれる主人公の台詞が

この小説を読み始めた心をなによりも鷲掴んだ要因であると答える人は多いだろう。

神さまというのはきっと完全無欠に立派で公平な人格者で、

強い者にも弱い者にも、お金持ちにも貧乏人にも、ただ平等に見守るだけで

決してどちらか一方をえこひいきして手をさしのべるなんてことはしないのだ。

なんてありがたいんだろう。死んじゃえ。

以後、一度は口にしたい台詞第1位であると同時に

座右の銘にしたい名言第1位に君臨し続けている。

感想文を書いてしまうと果てしなく長くなるので割愛するが

第一話に登場する親友のことを結局ずっと気にかけてるあたりが

キーリの本質であり、あの決断だったりあの結末だったのだと思う。

(超)個人的には、タイトルに【キーリ】と関してるだけあって、9巻もかけて

キーリという娘がどういう少女なのかをひたすら解体新書してると捉えていて

ともすれば二人の仲に”邪魔”に映る兵長だって、

きっと二人の希薄に収まりがちな感情を起こす大事なノイズなんだろうと思う。

ラジオだけに。

アニメ化してないのでイマイチ知名度に欠けるが、胸を張って人と共有したい小説である。

田上俊介

謝罪から入るが、実は、壁井ユカコの著書は直後の【鳥籠荘】だったり以前の【チャイルド】だったり発刊されているものはそこそこ引き続き読んでいるのだが

田上俊介の描いた挿絵の小説を手に取ったことがあまり無い。

いや、【イース】をはじめとして目にはするのだが手元に少ない。

なので知識が偏ってしまうのだが、

彼のイラストの魅力は端的に言ってしまうと”自然”だと思っている。

上述の通り壁井の文章が説得力あるので読者はその情景を思い浮かべやすいのだが

田上のイラストはその想像を裏切らない。

だが裏切ってないのは思い描いた大まかな構図だけで、

完成度は想定の範疇を軽々と越えてくる。

そう、画力の単純な平均値が段違いなのだ。

突飛なデザインを持ってくるわけじゃなく、あくまで自然にあるままに

普通が一番上手いから汎用性も高い。

そういえば受賞時の審査員コメントは全員一致で「即戦力」だったと記憶している。

それと背景もキャラクターと遜色ないクオリティであることも大きい。

人物も静物もどっちも得意という絵描きは多くない。

見よ、彼のイラストを。

登りたくなるような山が、曲がりたくなるような街角が

切り裂きたくなるような空が、超えたくなるような地平線が

そこにはあるではないか。

頭の中で流れている映画の1シーンを切り取ったようなイラストの

二つの意味での”自然”。

昨今は需要に合わせて自然じゃない華美な美少女も描く器用さを見せるが

個人的に『キーリV』のような、

主人公にこんな地味な服着せてるのに画面がさびしくない、

じみうるわしいテイストのイラストが大好物である。

今後も壁井ユカコ・田上俊介、そして【キーリ】を応援していきたい所存です。

そりゃもうアニメ化だって諦めてませんよクラウドファンディングとかしたらいいんじゃないかなぁ

久遠の絆

完全に余談だが、

田上俊介がアマチュア時代に描いたと思われる絵が載っている冊子がある。

(だがきっとそれがきっかけで

いくつかのコミックアンソロジーに声がかかったのではないかと想像できる)

輪廻転生、妖怪と陰陽渦巻く千年巡る恋愛物語、

【久遠の絆】こちらがそのファンブックである。

中を覗いてみると……

先生、もう上手いっす。

キーリと出会う前からこの本は所持していたので

ふと読み直してこの事実に気が付いたのは

もう【キーリ】が5・6巻出てた辺りだった気がします。

高原万葉にしろハーヴェイにしろ、

なんだか悠久の時をまたぐキャラクターに縁のある田上俊介は

そのイラストもおそらく永く愛されることになるんじゃないかなと漠然と思いますかしこ。

壁井ユカコtwitter https://twitter.com/kabe_yuka

田上俊介twitter https://twitter.com/bqw02277

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