【田上俊介個展:サナトリウム】×進行豹トークショーレポート②

不思議博物館 喫茶/ギャラリー サナトリウムにて
田上俊介初個展開催中!

※店内の写真は>>こちら

筆者B突貫福岡珍道中手記

天神彷徨歩記

空は見事な秋晴れ。

東京から福岡への空路もずっと蒼空が広がり

福岡の街並みが眼下に見えるころには

時折追い越す薄い雲とともに眠気は機外に散らして動悸と期待を高めていた。

人生で初めて降り立つ九州島という大地で地下鉄からの出口を誤ったことと

普段足を運ぶイベントがV系バンドのライブくらいなので

それと同じ衣装を纏ったことが文字通り足を引っ張り、

とらのあな天神店の周りを15分ほど彷徨った挙句

開演5分前に店舗へ電話で助けを求める体たらくを犯す。

歩き回ったせいで化粧が半分汗で溶けた顔でようやくサナトリウムへ至る階段を発見。

なんとかトークショーが始まる直前に入店することができた。

サナトリウム内装

会場は不思議博物館と謳っているだけあって珍妙の一言。

事前にHPでチェックしていたとはいえ、

実際に人体模型や医療用品が居並ぶ光景は不気味だが壮観。

明らかに病院の待合室が構える扉が迎え

学校のお手洗いくらいでしか馴染のないタイル張りの床や壁に

試験管やビーカーに入れた飲料や膿盆に乗せた料理と、

随所にコンセプトの拘りが見えて非常に興味深い。

今回は絵師の画廊と同居する舞台となるだけに

ある意味芸術的違和感も加わりいよいよ混沌な空間へ。

しかし、一部血糊の混じるイラストもあるので

謎の調和を見せる一角もあったことを明記しておく。

想定されていたのかいないのか

明らかにイベント会場のキャパシティを超えた人数を収容して開催が宣言された。

しばし整列が行われ、司会の軽快な呼び込みと共に田上が登場し

待ってましたと喝采に包まれる。

田上俊介備忘録

まずは幼少期の生い立ちから質問スタート。

物心付く前からどうやら絵を描いていたことを親から聞いたそうで

弟が出来てからは彼の喜ぶ姿が嬉しかったと語る。

その弟は容姿が整っており、

もしかしたらハーヴェイに似ているかもしれないと発言すると黄色い歓声が上がった。

小学6年を数えるとプロを意識。

親から一度は猛烈に反対されるが、折れない心がそれを封殺。

近所の美術教室で習いつつ、専門学校の存在を知るとそちらを目指すことにする。

目的を定めたら一直線で、まさに成功する者の道筋と合致するのだが

代々木アニメーション学院へ入学するために卒業した履歴が必要とあらば

ろくに通っていなかった中学校に卒業証書を貰いに行くためだけに乗り込むという

柔和な口調とは裏腹に不屈の精神も持ち合わせているようだ。

そうして技術を培った少年はアシスタントをしながら漫画家を目指すことになる。

だが、司会も指摘していたが田上のイラストは全てがハイクオリティで情報量が多く、

出力を調整してページごとの運動量を上下させ最高潮を演出しなくてはいけない

漫画の小回り/コマ割りには向いていなかった。

一枚入魂が評価されるイラストレーターへの道はある意味必然とも言える。

ここで一つ謝罪。久遠の絆

とあるゲームへの投稿が今は恥ずかしくて見られたくないと仰っていたが

4ヶ月ほど前に思いっきり、しかも写真までドヤ顔で載せてしまった記事がこちらである。

トークショーでその作品に触れてくれた事も嬉しかったし

彼のルーツであることも間違いないと思うしなにより

確か未だ「消してくれ」と言われてなかったと記憶しているので残しておく所存である。

あとその投稿がきっかけでアンソロに声がかかったというのは予想通りだったらしい。

ドヤ

田上俊介英雄譚

そもそもが投稿作品で惹かれた懸賞担当者が声掛けをして実現した案件なのだが、

司会が「今日俺”すげぇ”しか言ってねェ!」という通り、

彼の歴史は賞レース荒らしと共にあるといっても過言ではない。

この日は挙がらなかったが、

ゲームファンブックの例、電撃大賞の他にも

フロンティアチャレンジ2010で複数賞独占、

ウェザーロイド募集グランプリ等輝かしい実績が履歴を埋め尽くす。

司会も思わず口走った「使いたいと思わせる汎用性がすごい」に全力で首肯したい。

そしてお待ちかね、【キーリ】関連の質問。

電撃大賞受賞時の門外不出のマル秘エピソードが明かされたが

実はあまり珍しい話ではない。

友人がコミックREXの賞を受賞した時も同じ話を聞いたし、

それに、9割ほどは電撃公式ページのインタビューでも覗けたりする。

(残り1割が広まっちゃいけない情報なのは確かだが)

また、同じページで確認できることなのだが

憧れの椎名優との共通点も多かったりするのでファンはチェックしてみよう。

絵を描き始めたきっかけ、投稿作品に関連性を持たせるといった傾向、

PC使い始めの絵で勝負できる弘法の筆の選ばなさっぷり等、

なるほど納得できる理由が並ぶ。

現在はまったく違う絵柄だが、言われてみればその当時の

具体的には【麒麟は一途に恋をする】あたりの絵柄には

不思議と僅かに微かに類似点があるように感じないだろうか。

事前の挙手によるアンケートでこの場には【キーリ】ファンが多いとわかったせいか

かなり直接的なキャラに関する質問が投げかけられる。

好きなキャラは始めは妹みたいという理由でキーリで

今はベアトリクス、異性的な意味でも。それこそ旅もしてみたいほどに。

一巻表紙が流石に一番苦労した代物で、それだけに思い入れも一入。

だがその苦労は報われ、きっとジャケ買いした人も多いだろうことを

我々は知っている。

ハーヴェイは昔から描きにくいので時期によってかなり絵柄が変わってしまったが

最近はようやくイメージ通りに描けるようになってきたそう。

(連載終了10年目にして!)

こちらは個人的にも感じていて、

当時描かれていたハーヴェイは、小説の中身を知らなければ

“クールでかっこいい”イメージを抱くことは想像に難くない。

だが最近の田上が描く彼は

“ぼーっとしてて割とぽんこつ”感がばっちり滲み出ている。

哀愁に見えて実はただ茫然なだけの表情になっているのだ。

身長差萌えは確信しての犯行。むしろ大好物で狙って描いているとのこと。

最新描き下ろしの色紙もまさしくそれが如実に表れている。

当初キーリとハーヴェイ2名に一枚ずつプレゼントする予定だったが

二人が乙女の像のように重ねた掌を引き離すという事に対し

主催者から猛烈な抗議が入ったので、1名様に2枚進呈と相成った。(グッジョブ)

司会の本日の様相は田上プロデュースで兵長仕様。

多弁なのもあって非常によく似合っている。

ほんとはがっちりとした車掌スタイルで来たかったが浮くという理由で却下したらしい。

10周年イラストで鉄道を背景に描いたのは確実に【まいてつ】の影響。

汽車もそれまで描いたことなかったが、

実写資料が豊富に送られてきてたとはいえ見事な再現度。

1か所だけ修正不可な重要な間違いもあったが

それを見逃されるほどの完成度を誇る。

個人的には今のその経験値でVSヨアヒム車内心臓奪還戦のシーンを見てみたい。

ちょうど連結部分での見せ場のシーンもあることだし。

【イース】関連は膨大な仕事量の中でやはり一筋縄ではいかない案件も多数。

だがぽしゃった企画でひとつの作品を立ち上げさせるほど、

上席の心を動かすほどの画力と魅力を持った田上らしいエピソードが語られた。

【イース・オリジン】はそうした奇跡の作品と言える。

キャラを描く際や仕事絵は決まり事や思い入れの面で苦心することも多いが

趣味絵、それこそ昨今の【キ-リ】書き下ろし作品や

仕事でも背景だけは100%自分の思ったように落とし込めるので気が楽とのこと。

特に自然物は育った環境の影響もあって空気感に格別のこだわりがある。

ちなみに、専門学校で背景の授業を受ける際に教師が口にする単語に”空気の層”というものがある。

分かりやすいところで言うと遠くのものほど空に透けるが如く薄く見える

目の錯覚もしくは光の屈折のことなのだが

恐らくそういった感覚を自在に使いこなせるのが田上作品の特徴といえるだろう。

リアルにも、ファンタジーにも寄せられるその手腕に、ファンは”自然と”魅せられている。

後半にはファンからの質問も受け付け、

【キーリ】ではピエロの話が好き、人工物と自然物の差をつける為に定規使用の有無がある、

0.3mmの2B芯がこだわり、だいたい一枚2,3時間で書き上げるが

【まいてつ】は車両のせいもあり17日間かかった、

蛇が題材のイラストが多いのは幼少期からなぜか好きだったが

あとよく捕まえてもいた(!)、等丁寧に答えてくれた。

興味深かったお話としては、Lose関係者の口から「個展開いた方がいいですよ!」と意見を頂いた3日後

サナトリウム従業員(今回の個展の主催者)から「やりませんか」と話が舞い込んできたこと。

よく物事には流れがあってやるべき時には都合よくことが動くものだとはよく聞く話だが

見事にそれが合致した今回の催しだったというわけだ。

今後の抱負としては、主要都市での開催と

アナログでの、特に水彩で作品を発表したいとのこと。

それこそ自分でも気に入ってると豪語した【キーリ】1巻5Pのふんわりしたイラスト。

まさしくしそれは水彩っぽいタッチだと言えるのではないだろうか。

個人的にも、浅田弘幸・宮城・THORES柴本・峰倉かずや、と

図らずも好きな絵師はアナログを得意とする方が多い。

もともとモノクロの艶ベタがおそろしく美しい田上が描くアナログイラスト、

今後もまだまだ深化する作品を拝める幸運に感謝したい。

最後にレア商品争奪じゃんけん大会が行われ、

勝者にはサイン入りの様々が贈られた。

手にした人の一生の宝物になったことは確実である。

滞在時間より移動時間の方が6倍ほどあったが

大満足の一日だった。

様々な分野で活躍する田上先生の軌跡は

まさしく我々の変光星なのかなと、

帰りの夜空に思ったりもしました。

めでたしめでたし。

お読み頂き有難うございました。

ご意見・指摘等喜んでお受けいたします。

まったくレポートしてない前半は>>こちら


壁井ユカコtwitter https://twitter.com/kabe_yuka

田上俊介twitter https://twitter.com/bqw02277

蛇ノ目担当twitter https://twitter.com/hikari_funohito

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